CPUにSnapdragonを搭載しているWindows11のノートPCを購入して講義・演習・実験等に使おうと思うのですが、注意すべき点はありますか?

あります。
工学部のwifi(無線LAN)に接続することはできますし、webブラウザでインターネットのコンテンツを閲覧するくらいなら支障はありません。しかし、講義・演習・実験等で使用するWindows用のソフトウェアが動かない(使えない)場合や、印刷しようとしてもプリンタが利用できない場合があるのです。

Qualcomm社のCPUであるSnapdragonで動作するWindows11は、Intel社および互換性のあるAMD社のCPUで動作するWindows11とは、名前と見た目が同じでも中身は別物です。Intel(互換性のあるAMD含む)CPU対応のWindows用として広く普及しているソフトウエアが、動作しないケースがあるのです。特にプリンタやグラフィックスカードなどの、デバイスドライバに大きく依存するソフトウェアで動作しないことが多い傾向があるようです。

以下に、工学部で使用頻度の高いソフトウェアが、Snapdragon搭載PCで動作するか検証を行った結果(2025年5月実施)を掲載します。なお、掲載しているソフトウェアの全ての機能を検証した訳ではありません。稼働する(稼働可否に○が付いている)としていても、100%の動作保証はしません。使ってみたら、「XXXXの機能が使えなかった」「○○○○が出来なかった」ということは、稀だとは推測しますが考えられますので、ご承知おきください。

ソフトウェア

ARM版の
リリース

動作可否
ESET(工学部提供ウィルス対策ソフト)
工学部ネットワークプリンタドライバー × ×
AutoCAD2024(CAD) × ○(エミュレーション)
Inventor Professional2024(CAD) × ○(エミュレーション)
Civil3D(CAD) × ○(エミュレーション)
ArchCAD(CAD) × ○(エミュレーション)
BIOVIADiscoveryStudio(分子モデリング、シミュレーション、データ分析) × ○(エミュレーション)
BIOVIADraw(分子構造描画・編集) × ○(エミュレーション)
サクラエディタ(テキストエディタ) × ○(エミュレーション)
Visual Studio Community 2022(統合開発環境)
Microsoft Office(Word Excel Powerpoint など)
Edge(Webブラウザ)
Chrome(Webブラウザ)
Firefox(Webブラウザ)
zoom(会議ソフト)
Adobe Phptoshop(フォトレタッチ)
Adobe Illustrator(ベクターグラフィック) × ○(エミュレーション)
Adobe Premire Pro(ノンリニア編集) × ○(エミュレーション)
Adobe Acrobat Reader(PDFリーダー)
Tera Term(ターミナルソフト) × ○(エミュレーション)
emacs(エディタ) × ○(エミュレーション)
msys2(開発環境) × ○(エミュレーション)
LtspiceⅣ(アナログ回路シミュレータ) × ○(エミュレーション)
vs code(コードエディタ) × ○(エミュレーション)

エミュレーション」については、

Arm でのエミュレーションのしくみ(マイクロソフト)

をご覧ください。動作可否に「○(エミュレーション)」と記載したソフトウェアは、使用中に警告ウィンドウが開いたり、場合によってはソフトウェアがフリーズする可能性があります。

大手メーカーでもSnapdragon搭載のノートPCが続々発売されており、今後も増えていくことが予想されます。ARM版Windows対応ソフトウェアがベンダーからリリースされれば、問題は徐々に改善されていくでしょう。しかし、2025年5月の時点では、Snapdragon搭載のノートPCにはさまざまな問題を含んでいることを理解して、これを受け入れることが出来る人以外にはお勧めできません。

個人の趣味・嗜好がありますので、「それでも購入したい」というのを止めることはしませんが、講義・演習・実験等で使用することを想定しているのであれば、慎重に検討したうえでご決断ください。

参考記事
ARMプロセッサ版Windows搭載のPCは工学部の講義で使用できますか?
個人のPCから学内プリンターが利用できない場合